障がい者雇用に利用できる助成金を活用しよう!~申請方法と活用事例~

障がい者雇用を促進する助成金は、企業にとって重要な支援制度です。
企業の社会的責任(CSR)やダイバーシティ推進においても、障がい者雇用は欠かせない取り組みとなっています。
日本政府は、障がい者雇用を支援するために、さまざまな助成金制度を設けており、

それらの活用が企業経営の一助となることが期待されています。
本記事では、障がい者雇用に利用できる助成金の種類、申請方法、活用する際の注意点についてわかりやすく解説します。

障がい者雇用に利用できる主な助成金の種類

障がい者雇用を推進する企業には、国や自治体からさまざまな助成金が用意されています。
ここでは代表的な助成金の種類をご紹介します。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金とは、厚生労働省が管轄する助成金で、障がい者や高齢者、母子家庭の母親などを新たに雇用し、一定期間継続して雇用する企業に対する助成金です。

特に、障がいの程度が重い方や高齢の障がい者を雇用した場合に、支給金額が高く設定されることがあります。

対象者別に、以下の8つのコースがあります。
・特定就職困難者コース
・生涯現役コース
・被災者雇用開発コース
・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
・三年以内既卒者等採用定着コース
・障害者初回雇用コース
・定雇用実現コース
・生活保護受給者等雇用開発コース

このうち、障がい者雇用に関わるのは、「特定就職困難者コース」「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」「障害者初回雇用コース」です。

特定就職困難者コース

母子家庭の母や障がい者などを雇用した場合に支給される制度です。
支給期間や支給額は、中小企業かどうか、短時間労働者かどうかなど、条件によって異なります。

・助成対象期間:1から3年
・支給対象期:1期(半年)ごと

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

65歳未満の発達障害者(自閉症スぺクトラム障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など)、難治性疾患患者(パーキンソン病、筋ジストロフィーなど)を雇用した場合に支給される制度です。
支給期間や支給額は、中小企業かどうか、短時間労働者かどうかなど、条件によって異なります。

・助成金額:30から120万円
・支給対象期:4期(半年)まで

障害者初回雇用コース

該当する障害者を初めて(もしくは、最後の対象となる障害者を雇用してから3年以上経っている場合)雇用する中小企業を対象とした制度です。
1人目の対象者を雇用した日から3ヵ月以内に、法定雇用率を達成した場合に支給されます。
対象となる障がい者は身体、知的、精神のいずれか。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、厚生労働省とハローワークが管轄する助成金です。

正規雇用へ移行する前に、能力や適性を見極めるために一定期間(原則3ヵ月間)試用雇用を行う企業に支給される助成金です。
雇用前に適性を確認することで、長期的な雇用につなげることが目的です。

トライアル雇用助成金には「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」があり、後者が障がい者雇用の対象となっています。

トライアル雇用助成金の対象者

障がい区分は問わず、「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号」に定められる障がい者で、ハローワークから紹介された求職者が対象となります。

トライアル雇用助成金の助成内容

精神障がい者以外は、原則3ヵ月間(テレワークの場合は6ヵ月)、精神障がい者は原則6から12ヵ月雇用した場合に助成金が支給されます。
支給額は、1人あたり、精神障がい者以外は月額最大4万円程度、精神障がい者は月額最大8万円となっています。

障がい者職場適応援助者助成金

障がい者職場適応援助者助成金とは、障がい者が職場で適応しやすくなるように支援する「職場適応援助者(ジョブコーチ)」を配置する企業に支給される助成金です。

障がい者職場適応援助者助成金は、「訪問型職場適応援助者の助成金」と「企業在籍型職場適応援助者の助成金」に分かれており、前者は企業に無料でジョブコーチを派遣する企業に支給されるものなので、障がい者を雇用する企業が対象となるのは、後者です。

ジョブコーチを配置する場合の費用が一部助成されます。金額は、中小企業かどうか、短時間労働者かどうかなど、条件によって異なります。
助成対象期間は最大6ヵ月間。

障がい者職場適応援助者助成金の注意点

ジョブコーチは、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」地域障害者職業センターの「支援計画」に基づいて行う必要があります。
また、就労継続支援A型事業所の利用者は対象外です。

助成金の申請方法

 申請の流れ
 申請に必要な書類
 申請におけるポイントと注意点

障がい者雇用に関連する助成金を活用するには、適切な申請手続きが欠かせません。
ここでは、申請の基本的な流れ、必要書類、そして申請時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。制度を最大限に活用するために、正確かつ迅速に手続きを進めましょう。

申請の流れ

助成金を申請する際の一般的な流れは以下の通りです。

1.情報収集と制度選定

助成金にはさまざまな種類があり、目的や対象者によって要件が異なります。
自社の状況に適した制度を選定し、対象要件や申請条件を確認しましょう。

2.計画書の作成

障がい者の雇用計画や支援計画を策定し、計画書としてまとめます。
雇用する障がい者の業務内容や支援体制、雇用維持計画を明確に記載することが重要です。

3.申請書類の準備

申請に必要な書類を用意し、労働局やハローワークなど、指定の機関に提出します。
事前相談を行うことで、手続きのミスを防げる場合があります。

4.審査・承認

提出した書類が審査され、助成金の支給が認められるかどうかが審査されます。
不備や不足がある場合、追加書類の提出や修正を求められることがあります。

5.助成金の支給

審査を通過すると、指定の口座に助成金が振り込まれます。
受給後も、適切に運用されているかどうかの確認が行われることがあります。

申請に必要な書類

助成金を申請する際には、以下の書類が必要になることが一般的です。
詳細は制度ごとに異なるため、事前に確認しましょう。

支給申請書

指定の書式で記載された助成金の申請書類です。
制度ごとに専用のフォームが用意されている場合が多いので、確認しましょう。

障害者等であることを確認する書類

身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などのコピーです。

雇用契約書

障がい者と締結した雇用契約書のコピーです。
雇用形態や労働時間、業務内容が明記されていることを確認しましょう。

就業規則・賃金規程

会社の就業規則および賃金規程です。
障がい者雇用に関する項目が含まれていることを確認しましょう。

労働条件通知書

労働条件を明示した通知書です。
雇用形態や給与条件が記載されていることを確認しましょう。

支給要件証明書

対象者が助成金の支給要件を満たしていることを証明する書類です。

業務日報や管理資料

助成対象者が適切に業務を遂行していることを示す資料です。

その他必要書類

その他、助成金制度ごとに追加書類が求められる場合があります。
事前に確認し、漏れのないように準備しましょう。

申請におけるポイントと注意点

助成金の申請を成功させるためには、以下の3つのポイントを押さえましょう。

不備のない書類を用意する

提出書類にはミスや記載漏れがないよう、事前に十分な確認を行いましょう。
特に、雇用契約書や労働条件通知書は、法令に準拠していることが必須です。

申請期限を厳守する

申請には締め切りが設けられています。期限内に必ず提出するよう注意が必要です。
余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。

継続的な報告のために記録を残しておく

助成金を受け取った後も、定期的に報告や監査が求められる場合があります。
雇用状況や支援体制を適切に維持し、記録を残しておくことが重要です。

まとめ

障がい者雇用に関する助成金は、企業が持続可能な雇用環境を整え、障がい者が安心して働ける職場を作るための強力な支援策です。制度を適切に活用することで、企業は経済的な負担を軽減しながら、社会的責任(CSR)の遂行やダイバーシティ経営の実現に向けた取り組みを効果的に推進することができます。

障がい者雇用に対する助成金制度は、企業の経営課題を解決し、より働きやすい環境を構築するための大きな後押しとなります。人材不足や雇用の多様性に課題を抱える企業は、ぜひ助成金を活用し、持続可能な雇用体制を実現してください。

企業の成長と社会的貢献を両立させる障がい者雇用の取り組みは、職場の多様性を高めると共に、従業員の意識改革や企業のブランド価値向上にもつながることでしょう。