育児介護休業法改正2025の施行はいつから?改正のポイントや就業規則の規定例をご紹介

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現在、日本では少子高齢化が進み、また、育児・介護をしながら働く人も多く、労働力不足が課題です。
このため、政府は企業に対して、柔軟な働き方の提供や支援制度の整備を促す動きを強化しています。
2025年に施行される改正育児介護休業法では、
特に「残業免除の対象拡大」や「時短勤務の代替措置としてテレワークの導入」などが注目されており、企業側の対応が求められます。
本改正では、育児・介護と仕事の両立をより支援するための新たな要件が設けられ、

多くの企業にとって就業規則の改定や社内制度の見直しが求められます。
そこで本記事では、育児介護休業法改正2025の施行時期や改正内容、人事担当者が押さえておくべき就業規則の改定ポイントなどについて解説します。

育児介護休業法改正2025とは?

育児介護休業法改正2025とは、何を指すのでしょうか?
まずは、育児介護休業法について押さえましょう。

育児介護休業法とは?

育児介護休業法とは、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、従業員が育児や介護と仕事を両立できるようにするための法律です。
育児介護休業法では、従業員が一定の要件を満たした場合に育児休業や介護休業を取得する権利を保障するとともに、企業側に必要な措置を義務付けています。

介護休業法は、1991年に公布されてから、従業員が育児や介護と仕事を両立しやすくするために、複数回の改正が行われてきました。
直近では、2022年から少子高齢化による労働力不足の解消のために、育児や介護と仕事を両立できる環境を整えようと、段階的に改正が行われてきました。
これを拡充すべく、2024年5月にも改正法が公布されました。この施行が、2025年4月と10月からそれぞれ始まります。

育児介護休業法改正2025の目的

先ほどお伝えしたように、2025年4月から施行される育児介護休業法の改正は、より柔軟な働き方を実現し、育児・介護を担う従業員を支援することを目的としています。特に、少子高齢化による労働力不足への対応が重要視されています。

この改正により、企業は人事・労務管理の見直しが求められることになります。特に、就業規則の改定、テレワーク制度の導入、育児・介護休業の申請フローの整備などが急務となるでしょう。

育児介護休業法改正で押さえておくべきポイント

2025年に施行される育児介護休業法改正は、企業の人事・労務管理に大きな影響を与えます。
ここでは、企業が押さえておくべき改正の主要ポイントについて、解説します。

子の看護休暇の見直し

改正前は、「子の看護休暇」として、小学校就学の始期に達するまでの子を対象に、病気やけが、予防接種や健康診断の際にのみ取得が認められていました。

改正後は、名称を「子の看護休暇」に変更となり、2025年の改正では小学校3年生修了までに拡大され、病気やけが、予防接種や健康診断に加えて、感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式、卒園式でも取得できるようになります。

2025年4月1日から施行。

残業免除の対象拡大

従来、3歳未満の子を持つ従業員には残業免除の制度が認められていましたが、2025年の改正では残業免除の対象が小学校就学前の子を持つ従業員にまで拡大されます。

企業には、労働時間の管理や人員配置を見直し、柔軟な働き方を導入する準備が求められます。

2025年4月1日から施行。

テレワークの導入を努力義務化(時短勤務の代替措置)

これまで育児や介護を理由に短時間勤務制度を利用する従業員が多くいましたが、2025年の改正では時短勤務の代替措置としてテレワークの導入が推奨されます。

特に、家族を介護する従業員がテレワークを選択できるような措置を講ずることが努力義務化されます(2025年4月1日から施行)。

また、3歳から小学校就学前までの子を養育する従業員に対し、テレワークを含む柔軟な働き方を複数、用意することで、時短勤務ではなくフルタイムで働けるような措置を講ずる必要があります。(2025年10月1日から施行)。

選択して講ずべき措置

・始業時刻等の変更
・テレワーク等(10日以上/月)
・保育施設の設置運営等
・就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
・短時間勤務制度

介護休暇取得の要件緩和

改正前は、週の所定労働日数が2日以下の従業員と、継続雇用期間6ヵ月未満の従業員には介護休暇の取得が認められていませんでした。
改正後は、後者が撤廃され、継続雇用期間6ヵ月未満の従業員でも介護休暇が取得できるようになります。
2025年4月1日から施行。

育児・介護休業の取得状況公表義務の強化

改正前は、従業員が1,000人を超える企業の事業主に対して、男性従業員の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられていました。

改正後は、従業員が1,000人以下であっても、300名を超える場合は公表が義務付けられます。
従業員数が301名以上の企業の人事担当者は、男性従業員の育児休業等の取得状況を正確に把握し、公表の準備を行う必要があります。
2025年4月1日から施行。

就業規則の規定例と修正のポイント

2025年の育児介護休業法改正に伴い、企業は就業規則の見直しを求められます。
変更に対応するために、就業規則にどのような規定を追加・修正すべきか、具体的な例を交えて解説します。

残業免除の適用範囲の拡大

改正後、育児中の従業員(子どもが小学校就学まで)の残業免除が適用されます。これに伴い、就業規則では対象範囲の拡大が必要になります。

【現行規定例】
第○条(育児における時間外労働の制限)
3歳未満の子を養育する従業員は、時間外労働を免除される。

【修正後の規定例】
第○条(育児における時間外労働の制限)
小学校就学までの子を養育する従業員は、申し出により時間外労働を免除できる。
会社は、従業員の申請に基づき、合理的な範囲で勤務シフトや業務負担の調整を行う。

このように改定することで、法改正に沿った規定となり、育児との両立を支援する企業姿勢を明確にできます。

テレワークを活用した育児・介護支援に関する規定の追加

時短勤務制度の代替措置として、テレワークの活用が推奨されます。これに対応し、就業規則にもテレワークに関する明確な規定を追加する必要があります。

【新設の規定例】
第○条(育児・介護に関するテレワーク制度)
会社は、育児・介護を行う従業員が希望する場合、週○回を上限としてテレワーク勤務を認める。
テレワークの実施にあたっては、業務の遂行に支障がない範囲で、従業員と会社が協議のうえ決定する。
テレワークの実施には、適切な情報セキュリティ対策を講じることを条件とする。

企業が取り組むべき就業規則改定の手順

法改正に対応するため、企業は以下の手順で就業規則を見直すことをおすすめします。

・法改正の内容を把握する(最新情報を厚生労働省のガイドライン等で確認)
・現在の就業規則とのギャップを分析する(どの項目を修正・追加するべきかを明確化)
・改正後の就業規則を作成する(従業員にわかりやすい表現を心がける)
・労働組合や従業員代表と協議する(変更内容を適切に説明し、合意を得る)
・社内周知を行い、適用を開始する(説明会や社内ポータルサイトでの告知を実施)
・定期的な見直しと改善を行う(施行後も、運用状況を確認しながら最適化)

なお、厚生労働省でも「育児・介護休業等に関する規則の規定例」を公表しています。

まとめ

2025年4月と10月に施行される育児介護休業法改正は、企業がより働きやすい環境を整備するためのチャンスでもあります。

育児や介護と仕事を両立しやすい制度を導入することで、従業員の満足度向上や人材定着率の向上が期待できます。また、男性育休の取得促進やテレワークの導入を進めることで、企業のブランドイメージ向上にもつながるでしょう。

施行までの準備期間を活用し、企業は早目に就業規則の見直しや社内制度の整備を進めることが重要です。2025年4月の施行に向けて、今すぐ準備を始めましょう。