それぞれの個性を知る ~障がい特性と向いている仕事内容~
障がい者雇用を成功させるためには、それぞれの障がい特性を理解し、適切な仕事内容を割り当てることが重要です。
一口に障がい者といっても、特性や強みは多岐にわたり、個々の適性に応じた業務環境を提供することが求められるためです。
そこで今回は、「障がい者の特性ごとに向いている仕事」をテーマに、
特性別の適性業務や配慮事項、雇用を支援する最新の取り組みについてご紹介します。
障がい者雇用の重要性と課題
障がい者雇用は、多様性を重視する現代社会において、企業が果たすべき社会的責任の一つといえます。
日本では、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づき、従業員数40名以上の企業には、法定雇用率2.5%の達成が義務付けられています(2024年11月現在)。
法定雇用率を満たすことで、企業は社会的責任を果たすだけでなく、多様な人材の活用による新しい価値の創造が可能になります。
しかし、達成が難しいとされる理由の一つが、障がい者の特性に応じた適切な仕事内容の割り当てや、職場環境の整備が不足していることです。
■障がい者雇用の課題1 業務内容の適正化
各特性に適した業務の設計が不十分だと、障がい者自身が能力を発揮しづらくなることがあります。
解決策としては、配属前に各障がいの特性を把握した上で、適性検査や面談を実施し、個々の能力に応じた業務を割り当てることが重要です。
■障がい者雇用の課題2 職場環境の整備
職場環境の整備としては、物理的なバリアフリー化だけでなく、心理的な安全性を高める取り組みも重要です。
たとえば、社内研修を通じて、既存の従業員の障がい者理解を深めることで、職場の受け入れ体制を強化できます。
障がい者の雇用形態一覧
障がい者雇用を成功させるためには、障がい者の特性やニーズに合った雇用形態を提供することが大切です。
以下で主な雇用形態と、それぞれの特徴とメリットや課題を解説します。
正社員
正社員として雇用すると、長期的なキャリア形成が可能です。
このため、企業の一員として一貫した業務を担ってもらえることを期待できます。
①正社員で雇用するメリット
・長期的に育成が可能で、業務の専門性を高められます。
・ダイバーシティの促進につながり、ブランドイメージやCSR活動の強化が期待できます。
②正社員で雇用する課題
・職場環境の整備や合理的配慮を求められるため、初期投資が必要です。
・特性に合わない業務や働き方が長期間、継続すると、離職率が上がるリスクがあります。
・支援体制や従業員の教育が不足していると、障がい者本人や職場全体のストレスが高まる可能性があります。
嘱託社員、契約社員
正社員と比較して雇用期間が限定される場合が多い形態です。
特定の業務やプロジェクト単位での雇用に向いています。
①嘱託社員、契約社員で雇用するメリット
・短期間で必要な業務に対応でき、柔軟な雇用が可能です。
・雇用期間終了後に継続雇用の適性を見極められるため、採用リスクを軽減できます。
・雇用期間を区切ることで、障がい者と企業双方が適応の可否を見極められます。
②嘱託社員、契約社員で雇用する課題
・雇用の安定性が低くなる可能性があるため、長期雇用に向けたサポートが求められます。
・短期間での成果を求めすぎると、障がい者が負担を感じやすく、結果的に業務効率が低下する可能性があります。
・雇用終了後に新たな雇用者を探す必要があり、再度の採用活動に時間とコストがかかります。
・社内での一体感が希薄になり、コミュニケーションに課題が生じる場合があります。
パート、アルバイト
勤務時間や業務内容を比較的、柔軟に設定できるため、体力や集中力に限界がある場合にも適した雇用形態です。
①パート、アルバイトで雇用するメリット
・業務量に応じてフレキシブルに雇用でき、人件費を抑えられます。
・比較的、簡単な業務や補助業務に専念してもらえるため、正社員の負担を軽減できます。
・障がい者にとっての負担が少ない環境を整えやすいため、定着率が上がる可能性があります。
②パート、アルバイトで雇用する課題
・業務の範囲が限定されるため、スキルの向上や役割拡大が難しい場合があります。
・長期間の雇用を前提としないため、頻繁な採用活動が必要になる可能性があります。
・障がい者の業務効率が上がるまでの期間、周囲のフォローが必要であり、チーム内の調整が求められます。
障がい者雇用での合理的配慮とは?
障がい者雇用においては、「合理的配慮」が欠かせません。
合理的配慮とは、障がい者がその能力を十分に発揮できるように、職場環境や業務内容を調整する取り組みを指します。
「障害者差別解消法」に基づき企業に求められる義務であり、障がい者が安心して働ける環境を整えることを目的としています。
具体例には、視覚障がい者向けに音声読み上げソフトを導入したり、聴覚障がい者向けに手話通訳や文字起こしツールを導入したりといったことが挙げられます。
障がい者雇用を進める上で、合理的配慮は単なる法令遵守にとどまらず、企業が多様な人材を活用し、創造的な業務環境を構築するための基盤となります。
また、合理的配慮を提供することは、障がい者の能力を最大限に引き出し、企業の競争力向上にもつながります。
主な障がいの種類と特性、向いている仕事内容
障がい者雇用を推進する上で、まず重要なのは、それぞれの障がい特性を理解し、それに合った仕事内容を割り当てることです。
以下で、主な障がい種別ごとの特性と、それに適した仕事内容について解説します。
視覚障がい
①視覚障がいの特性
視覚情報の取得に制限があるため、音声や触覚での情報提供が有効です。
完全な視覚障がいの場合と弱視の場合で、求められる配慮が異なります。
②視覚障がい者に向いている仕事内容
・音声による対応業務(コールセンター、音声データ入力)
・点字印刷や校正作業
・デジタルツールを活用したマーケティングや事務業務(スクリーンリーダー対応)
③視覚障がい者への配慮ポイント
・音声ソフトや点字ディスプレイの提供
・安全に移動できる動線の確保
聴覚障がい
①聴覚障がいの特性
音声の聞き取りが難しいため、視覚や文字情報でのサポートが有効です。
補聴器の使用や手話を理解するスタッフの配置も効果的です。
②聴覚障がい者に向いている仕事内容
・製造ラインや工程管理業務
・データ入力やプログラミング
・設計業務や文書作成業務
③聴覚障がい者への配慮ポイント
・手話や文字起こしツールの導入
・緊急時のビジュアルアラート設備の設置
肢体不自由(身体障がい)
①肢体不自由(身体障がい)の特性
身体の一部または全体の動きが制限される障がいです。
オフィスや作業場のバリアフリー化が重要です。
②肢体不自由(身体障がい)者に向いている仕事内容
・リモートによる事務やカスタマーサポート業務
・データ分析や資料作成
・設計やプログラミング業務
・農業(種まき、植え付け、収穫など)
③肢体不自由(身体障がい)者への配慮ポイント
・作業スペースのバリアフリー化(スロープや昇降式机の設置)
・トイレや休憩室の利用しやすさの確保
知的障がい
知的障がいは、発達期に現れる知的能力や適応能力の制限を特徴とする障がいです。
特性は個人によって大きく異なり、「軽度」「中等度」「重度」「最重度」の4段階に分けられますが、画一的な理解ではなく、一人ひとりの個性と強みを理解することが大切です。
①知的障がいの特性ポイント
情報の理解や処理に時間がかかる場合が多いが、ルーティン業務では高い能力を発揮することがあります。
②知的障がい者に向いている仕事内容
・シンプルな製造作業や梱包業務
・清掃業務
・商品の陳列や管理作業
・農業(種まき、植え付け、収穫など)
③知的障がい者への配慮
・明確な指示書や手順書を用意
・定期的なフィードバックを通じた業務確認
内部障がい
①内部障がいの特性
内臓機能の障がいや慢性疾患により、体調に波がある場合が多いです。
体調に配慮した柔軟な勤務形態が求められます。
②内部障がい者に向いている仕事内容
・スケジュール管理やデータ入力業務
・カスタマーサポート
・軽作業(無理のない範囲で)
③内部障がい者への配慮ポイント
・通院や休息が取りやすい勤務スケジュールの調整
・ストレスを軽減する業務割り当て
精神障がい
①精神障がいの特性
ストレスや精神的な負担に影響を受けやすい場合があります。
環境や業務内容の調整が重要です。
②精神障がい者に向いている仕事内容
・創造的な業務(デザイン、ライティング)
・分析や企画業務(データ分析、リサーチ)
・短時間で完結する軽作業
・農業(種まき、植え付け、収穫など)
③精神障がい者への配慮ポイント
・働きやすい職場環境(静かな作業スペースの確保)
・定期的な面談やカウンセリングの実施
発達障がい
①発達障がいの特性
得意な分野で高い集中力や能力を発揮できる一方、コミュニケーションや柔軟性が課題となる場合があります。
②発達障がいに向いている仕事内容
・ルーティン業務(データチェック、品質管理)
・IT関連業務(コーディング、システム開発)
・商品管理や梱包作業
・農業(種まき、植え付け、収穫など)
③発達障がいの者への配慮ポイント
・明確な指示書や作業手順書の作成
・静かで集中できる作業環境の提供
発達障がい者を雇用する重要性
発達障がいを持つ人材への注目が高まっています。背景には、障害者雇用率の法定化に加え、発達障がい者特有の強みに着目した企業が増えていることが挙げられます。
発達障がい者は特定の分野において、高い集中力や記憶力、独自の視点などを発揮し、企業の競争力強化に貢献する可能性を秘めているからです。
このため、発達障がいを持つ人材は、企業にとって貴重な人材となり得ます。
彼らの得意分野を活かすことで、生産性の向上やイノベーションの創出につながる可能性があります。
たとえば、IT分野における高い集中力や正確性は、システム開発やデータ分析において大きな強みとなります。
また、ルーティンワークを正確にこなし続ける能力も、多くの企業にとって重要な資産となります。
個々の特性を理解し、適切なサポートを提供することで、発達障がい者は企業にとってかけがえのない存在となり、新たな価値を創造してくれるでしょう。
まとめ
障がい者雇用の成功には、障がい特性を正しく理解し、それに応じた業務内容や職場環境を提供することが不可欠です。一口に「障がい者」といっても、特性や強みは多岐にわたり、雇用する側が柔軟な対応を行うことで、双方にとって有益な関係が築かれます。
この記事でご紹介した通り、視覚障がいや聴覚障がい、肢体不自由、精神障がい、発達障がいなど、それぞれの特性に適した仕事内容や配慮事項を知ることは、労働力としてのポテンシャルを引き出す第一歩です。
また、障がい者にとっても、適切な業務環境が整えば安心して仕事に取り組むことができ、長期的な雇用関係の構築が期待できます。
企業にとって障がい者雇用は、法定雇用率の達成にとどまらず、多様性を取り入れた組織文化の醸成や、社会的責任の遂行といった価値を提供します。この機会に、自社の雇用形態や環境を見直し、新しい取り組みを始めてみてはいかがでしょうか?
障がい者雇用を通じて、企業も社会も共に成長できる未来を目指しましょう。
なお、『はーとふる農園』では、障がい者の方が働きやすい環境と仕事を提供しています。 貴社に、『はーとふる農園』の一区画をご利用いただき、当社からは、就農を希望されている障がい者の方(実習済み)をご紹介します。雇用いただいた障がい者の方を『はーとふる農園』に配属していただくという仕組みです。
障がい者の特性をに合わせた雇用に関して悩んでいる企業様は、ぜひお問い合わせください。
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